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漫画家の見た3.11

毎週日曜に時限投稿しているけど、その日とは。

合掌。

いつも読んでる漫画にも震災関連のエピソードが含まれているエッセイものが多いことから、意識的に「3.11漫画」をまとめて読んだ。
震災についての写真や映像や手記はもう、いろいろあるけど、やっぱり漫画って時間や感情を収納・展開する機能に優れている。
(脚色があるとも言えるけどね)

ほかにもありそうだけど、手にできた範囲で。


たくさんある……。

「僕と日本が震えた日」(鈴木みそ)
レポート漫画といえば鈴木みそ。
身近なところから始まって、放射線、放射性物質についても取材している。
そのうえで、「わからないことがある」。
経済学者への取材で震災後の円高の謎にも触れている。
科学的、経済学的、そして心理的な面も含めて震災の被害、復興について考えている。
見たこと、感じたこと、調べたこと、思うことを描いた震災関連の作品は多いけど、「考えた」作品として傑出。

「原発幻魔大戦」(いましろたかし)
もしもボックスあたりでズレた世界に迷い込んでしまったような2011年記録。
引きずられる日常で「マジか!」「どうなるんだ…」とつぶやきながら暮らすリアリティ。
デモに行っても空振り感、現場に行っても原発じゃないとこで防護服。
何かしたいけどできない無力感が通底。普段の作品のダラダラムードと降ってわいた危機の噛み合わせが面白い。
テレビやケータイ眺めながら、小規模にゴーマンかますしかないんだよなー。

「あの日からのマンガ」(しりあがり寿)
3月14日から再開していたらしい、朝日新聞夕刊の「地球防衛家のヒトビト」や、コミックビーム、小説宝石に掲載した作品群を収録。
ゲンパツや放射性物質を擬人化した、ヤケクソな作品が鋭利で痛い。
双子のオヤジが選ぶ、「たまたま」の行く先がコレだよ! 無力感について素直。
展望がいきなり超未来なのも、逃避といえば逃避。でもそれも漫画の想像力だよな。


……衝動から描かれた切迫の作品。


「うちの妻ってどうでしょう」4巻(福満しげゆき)
家族愛と自己愛にあふれたエッセイ漫画。
104話の「地震あったじゃないですか……」から、直後の1~2週間を描く。
ある程度とっさに動けたことで安心したのか、ごく一時的に饒舌になっている感じとか、情報の洪水の中で「とりあえず誰も本当のことわかってなさそうだ」とだけ確信させられる不安とか、ゆっくり不安定になって行動がズレていく家族とか。
2ちゃんじゃなくてtwitter見てたことと、子どもがいないところは違うけど、自分ちの様子に似ていた。

「中国嫁日記」2巻(井上純一)
池袋と日暮里をつなぐ夫婦愛。ラブラブはいつものことだけど、非常時だけになおさら。
当日夜の、帰れないしやることないから(情報もないので気持ちは平常に戻る)呑んじゃおうかってひとは結構いたんじゃないかな。
期末試験を継続しようとした日本語学校の先生(日本人)は強心臓なんだけど、思えば当日ってそんな気分だったような記憶がある。
津波や気仙沼の家事、原発事故の映像を目の当たりにするまでは「被害は大きいにしても揺れただけ」だったような。

「とりったー」(とり・みき)
twitterを使って募集したネタを漫画にする異色スタイルの連載。
6話目「イタイ話」をやってたら地震が起き、そのまま7話目では、震災情報と震災から生じた感情であふれるtwitterを追いかけることしかできなくなってる。
震災から数日の流れまくってくる情報の洪水を思い出す。
6話目は三月号掲載。3月19日発売。あとがきいわく「震災を描いたマンガとしては一番早かったかも」と。月刊とか週刊ペースのマンガだと、最速かな。

そして、とり・みきでいうと「僕らの漫画」収録作品が忘れられない。
いまさらに石で追われる、アトム。同人誌版というか印刷版も買いたい。


「ゴーガイ! 岩手チャグチャグ新聞社」2、3巻(飛鳥あると)
震災で「グチャグチャ」になった新聞社の漫画かと思ってしまったけど、題名は岩手県のお祭り「チャグチャグ馬コ」に由来してて、震災前から連載してた作品。
最終回の15話目で4月からの新生活を描いた後に震災が来たそうな。
2巻の巻末に作者の震災体験記が、3巻にはもうひとつの最終話にあたる特別編が収録されている。
出来事以上に、それに関わる生活者の気持ちを汲む記者が主人公だけあって、被災者といっても一様でない人々の感情模様を突いてくる。
内陸と沿岸にも断絶があるのか…。

「震災7日間」(槻月沙江)
仙台在住漫画家の体験記。4月4日にPixivにラフが投稿されたそうな。
その場の動き、気持ちの再現が生々しい。記憶力、再現力は漫画家の重要な能力だな…。
ほかの震災ものにもあったけど、4月7日の大きな余震で「心が折れた」そうな。
片付けて、ちょっと前に進もうか、ってときだったものな。
漫画家半生記も織り込んであって、作者の生命力に打たれる。

「東日本ふるさと物語」
被災地域出身の漫画家たちによるアンソロジー。あくまでも題材は地元愛。震災ものだけじゃない。
ニコ・ニコルソンの「帰ろう」は東京在住ではわからない地元の気持ちをそっと差し出された感じ……。合理的な何かだけでは語れないよな。

「3.11東日本大震災」(平井寿信)
4歳の娘と妊娠中の妻とともに過ごした30日間の記録漫画。
震災翌日に発行された河北新報もちょっと出てくる。パチンコ屋のチラシが入ってたら「日常の名残だねぇ」とつぶやくよな。
買い物難民になりつつも実家を頼って大家族でたくましく生活を立て直す様に、不幸中に幸いをつかむための力を思う。

「震災に負けるな!東日本Project」
参加作家多数のチャリティー同人誌。参加作品は震災がらみでないものが多く、直接メッセージを発するよりも募金のきっかけとなることが目的なんだろう。
漫画は少ないだけに、「3.11さん」(菅原県)のパンチ力が光る。



「わたしたちの震災物語」(井上きみどり)
石ノ森萬画館スタッフの津波体験に始まり、避難所のこどもケア、放射能についてなどテーマ別に取材した短編集。
必要なのは物資と愛情と、そして仕事。リアルだ。

「いつか、菜の花畑で」(みすこそ)
震災に関するニュース、報道から織り上げた短編集。
大きな括りの被害では見えない、個人的な体験記を追想。
泣ける話、いい話で消化しちゃいそうだけど、記録として大事だね。

「国防論」「本家ゴーマニズム宣言」2巻(小林よしのり)
エッセイ、実録漫画といえばコレはどうなってるんだろうと思って読んでみた。
変わらぬマッチョぶり。精神的な動揺をあまり見せない。
そして愛国だから反原発の結論。確かに。
被災地取材だと「国防論」のほうが迫真で、被災者の証言を漫画にした見開きの音がヤバい。
有事での自衛隊とは、国を守ることとは、守るべき国ってなんだ、という論点は、歴史的にどこからどこまでを「自分に関係のあるもの」と結び付けられるかで、意見が変わりそう。

以下、ちょっと違うタイプ。

「まんが極道」6巻(唐沢なをき)
66話「リセットくん」は、漫画をあきらめて田舎に帰っていたところに震災が起きて「東京ざまああああ」「東京はなれてた俺大勝利」とのたまう山本屑男くんが主人公。
仮に東京がリセットされたところで、自分に描くものがなければ始まらないよな。

「ジョジョリオン」1巻(荒木飛呂彦)
仙台(S市)にある架空の街が舞台。3月11日の大震災で建物は倒壊しまくっていて、海側には10kmにも及ぶ「壁」が隆起しているという設定。
作品世界を外から断絶させたかっただけかもしれない。震災は何か絡むんだろうか。
(具体的に絡んでも違和感ある作品だろうけども)

あと、関連で。
京都国際マンガミュージアムで「世界のコミックス作家がみた3.11」という展示をやってるそうな。5月6日まで。

ううむ、京都、行くか! 図録も見たいしね。

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